中庭の梅に寄せて

有事  

                     永瀬清子

戦争が来たらと云う。

戦争が来たら、という声そのものがもう有事なのだ。

戦争で一番おそろしいのは

一時の気の迷いで後悔をあがなうことだ。

えらい詩人にもたくさんの例があることを私は見ている。

自分の信ずること以外には したがうまい。

そんな単純なことでもちゃんと決めておかないと、

きっとその時になれば

五寸釘を折り曲げるように曲げられる世の中なのだ。

おそろしい。

私はもう有事を語っている

 

                短章集『焔に薪を』より

 

「不屈の精神」を意味する梅。

 困難を抱えている方々が安寧の春を迎えられるよう祈って